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基調色の衝突:階段周辺
イマジネーションの限界
境界
境界という興味深い概念は、哲学からエンジニアリング解析に至るまで、
全ての分野で非常に重要なものとなっている。
異なる性質が出会う場所では、必ず境界がテーマになる。
文化・人種・宗教・性・言語…
それが対立に発展する場合もあり、調和を生み出すこともある。
対立が深刻になれば戦いになる。
考えてみれば、人類史上の全ての戦争は境界線をめぐる戦いだった。全ての戦争は、侵略戦争だったのだ。
住宅建築でも隣地との境界線がしばしばトラブルになるのは、良く知られたことだ。
さて、住宅内ではどうだろう? 実は家の中でも境界問題は発生する。
家族内の力関係による、占有面積の争奪戦は面白いテーマだが、このHPの趣旨から逸脱するので、
以下では床とクロスに関する境界に限って考えてみよう。
1階と2階の基調色
プランのセッションで、1階と2階の床の色を変えたことを書いた。
わが家は、1階を「モルト・ブラウン」、2階を「ライト・ハニー」にした。
各部屋ごとに床の色を変える施主もいる。しかし、家全体の床を同一色で統一する施主が大半のようだ。
また、クロスを何種類使うかも施主の好みによって変わるところだ。
(クロスの種類が多くても金額は一緒)
わが家は、部屋によってクロスを変えた。床の色は二種類だけだが、クロスは何種類も使ったことになる。
部屋ごとにクロスを変化させ、部屋の雰囲気を変えることは、心地よいことだと考えた。
ただ、度が過ぎるコントラストは、統一性のない家になってしまうので、注意が必要。
プランが次第に決まっていく頃、1階と2階の様子を頭の中に描いてみた。1階の床は濃い目、2階は薄め。
次に、各部屋のクロスをイメージしてみる。何となく見えてくる。
しかし、どうしてもイメージ出来ない場所が残った。階段だった。
「階段のステップは何色になるのだろう? 1階と同じ色? それとも2階の色? 自分で指定するのか?」という疑問。
「それから、階段の壁のクロスは、どうなるのだろう? 1階かと同じ? 或いは2階?」考えれば考えるほど、
階段周辺は、私のイマジネーションの限界を超えていることを実感した。

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1階の床色 モルト・ブラウン (ミディアム) |
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2階の床色 ライト・ハニー |
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床は1階から、壁は2階から
「稲垣さん、階段の色とか、階段の壁のクロスはどうなるの? 検討していないと思うけど…」と
インテリアコーディネーターさんに質問した。
「ハイムでは、1階の床の色がそのまま階段の色になります。壁は2階のクロスが張られます」との返事。
「床は下から、壁は上からってことか…」と私。
「はい、そうです」と稲垣さん。
「どうして? 逆に床が2階と同じで、クロスが1階と一緒じゃ、いけないの?」
いろいろと説明してくれたが、どうしてもイメージできなかった。能力の限界を感じた。悲しい。
さて、下の写真1をご覧いただきたい。現在の階段の写真。
1階床のモルト・ブラウン色が階段ステップへと続いている。自然だ。
次に写真2は、階段を昇って2階に入る付近。下から続いて来たモルト・ブラウンが突然ライト・ハニーに変わる。
これが境界問題だ。この色調の変化に違和感を感じるなら、家全体の床を同一にすることをお勧めする。
また、写真の右上に巾木が写っている。少し回りこんでいるので、更に違和感が増す。
プラン検討時点ではイメージできなかったことが、本物を見て初めて理解できる。
確かに、階段が2階の床と同じだったら、今よりも違和感があると思う。
1階から階段を昇り始める時点で色が変わるのはヘンだ。
また、壁は2階のクロスが下りてくるのが、やはり自然だ。ただ、この下りたクロスが1階のどこまで続くのかはプランにより異なる。
わが家は、1階の廊下から階段が昇っているので、廊下全体の壁が2階のクロスと同じものになっている。

盲点:腰壁の手すり
上記の問題は、入居前に頭の中では大体を理解し、納得していた。
しかし、事前には予想できなかった盲点が入居後に露呈した。
下の写真3をご覧いただきたい。これは2階から階段を見下ろしたアングル。
わが家は2階にリビングがあり、このリビングから直接階段が始まっている。簡単に言うと落とし穴のように
階段がある。小さな子供がいたら、ちょっと怖い。でも慣れれば大丈夫。
写真で分かるように、階段の周りは腰壁になっていて、その横と上に手すりが付いている。
この手すりが1階と同じモルト・ブラウンの色調なのだ。
この手すりは完全に2階部分にあるので、2階のライト・ハニー色とのコンビネーションが悪い。浮いている。
この部分をライト・ハニーに変えた方が良かったと、後悔している。だが、気付いた時には遅かった。
これは入居して初めて分かった問題だ。
このような問題を事前に理解するのは、非常に難しいと思う。
もし、見学した実邸で同じような状況があったならば、気付いていたかもしれない。
ただ、この部分をライト・ハニーにしても、階段途中の手すりはモルト・ブラウンなので、
同じ階段で部分によって色が違うことは、別の意味で妙だが…。
結局、境界をどこに設定するかの問題になる。
このように多少の不満は残るが、床の色を変えたこと自体には、私は満足している。
以上、家の中でも境界問題が発生することを書いてみた。

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 hints
床の色を変える時には注意が必要。
展示場や実邸で、床やクロスがどこで変化するのかを十分に説明してもらいチェックしよう。
変化か統一感か…どちらでいくのかを家族で話し合おう。家族内に境界問題があっては、家の境界問題は解決できない。

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