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玄関ホール照明位置の問題
モグラ叩きの穴状態!
現実はホームページより奇なり
このページを読むと次のことが理解できる。
それは、
・プラン検討の限界…
・現場での迷走…
・意思伝達の過程での勘違い…
・イマジネーション能力不足が引き起こす問題…
などの事柄だ。
これらは住宅建築で排除したい欠点だが、多重的に発生した場合のドタバタをここで見ることができる。
あまりに悲惨なので、逆に笑えてしまう。
だが、わが家を訪問する人々は、玄関の天井に隠された傷跡を知らない。
第1ステージ:プラン
下の図1を見ていただきたい。
稲垣さんと打ち合わせた玄関ホールの照明位置。ここにはダウンライトを6つ付けることにした。
玄関ドアに近いタタキの真上に2つ(番号の1,2)。上がりかまち付近に2つ(番号の3,4)。さらに奥の壁の近くに2つ。
奥の2つは装飾した壁を照らす。
明暗の雰囲気を出すために、わざと他の4つとは距離を空けた。玄関ホールの真中を少し暗くして、
壁を引き立たすねらい。勿論、稲垣さんのアイディア。
玄関を入ると左側には下駄箱(図の緑色部分)がある。下駄箱の幅は2メートルで、一部は天井までの高さ。
下駄箱が天井までなので、1〜4番のダウンライトは下駄箱を除いた空間を考えて配置した。
一方、奥の壁飾りはホール全体の中心で配置している。
そのために、1〜4のダウンライトと奥の2つは微妙にずれる。
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図1
1,2,3,4のダウンライトは、下駄箱以外の空間の中心を考慮して配置した。
下駄箱が天井まであるため、そうしないとバランスが悪い。
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第2ステージ:四者立会
プラン決定後も、下駄箱が気になっていた。
わが家の1階の天井高は255センチで高めの天井。2階の天井高は240センチで、これが標準の高さ。
下駄箱が天井まであると、切り立った壁のような威圧感を感じる気がしてきた。
考えてみれば、幅は2メートルと長めなので、
低くても収納力はそれなりに確保できる。それなら、カウンタータイプにして
上に物を置けるようにした方が開放感が出るはず。
四者立会の時に、この件を検討した。結局、カウンタータイプに変更した。これで工場発注だ。気分が楽になった。
…しかし、重大なことを見落としていた。ダウンライトの位置だ。上の図1から緑色の部分の下駄箱を取り除いた
状態をイメージしてほしい。カウンタータイプに変更したので、下駄箱の上の空間は開いている。
だからダウンライトはホール全体のセンターに変更しなければいけない。
しかし、そこまで注意が回らない。ダウンライトの位置を変更せず工場に発注してしまった。
もし、そのまま入居していたら、玄関を入った時にダウンライトが右に寄っていることを不満に思っただろう。
実邸見学の時に、そのような不自然さを感じた家もある。
私はとても気になるが、気にしない人もいる。
今回は、この問題を現場で回避できた。そのドタバタの記録がこのページだ。
さて、工場に間違ったまま発注してしまった原因は、どこにあるのだろう?
四者立会の席に稲垣さんがいなかったことは大きい。彼女がいれば気付いて修正できたかもしれない。
営業や設計が気付かなかったことは、どうだろう? 責任があるのか?
私の意見では、彼らがダウンライトと下駄箱の位置関係にまで注目することは、ちょっと無理だったと思う。
結局のところ、プランを変更したら、その変更の影響がどこまで及ぶのかを十分に吟味することが大切だと思う。
特に終盤の変更ほど慎重に見直した方がいい。
第3ステージ:据付後
工場から出荷される時点で、既に天井からダウンライト用の電線が垂れ下がっている。
玄関に入るなり、天井を見上げてその不自然さに気付いた。ダウンライトが右に寄っている。
プランを決めてから2ヵ月過ぎているので、不自然さの理由がすぐには分からない。
しばらく考えて、下駄箱を低くした記憶がよみがえってくる。
1階の大工さんに脚立を借りて、天井を計測する。首と手が疲れる。どうすればいいのか考える。
計算して私が出した結論は、2番と4番を壁側に30センチ移動する案。(図2)
こうすると、ホール全体でのダウンライトの納まりもよくなるし、奥の壁を照らす2つのダウンライトと中心軸が一致して理想的な配置。
また、移動するダウンライトは2つだけなので作業費が掛かっても安い。我ながら満足のいく案。
早速、現場にいた電気屋さんに工事をお願いしようとすると…
「ダウンライトは私の担当じゃない」との返事。
「えっ、何で? 電気工事でしょ?」
「昔は、私達がやっていたこともあるんですけど、今はインテリアの担当なんです」
ちょっと残念。電気屋さんが作業するなら、今この目で変更を確認できるのに…
仕方なく、現場監督の西野さんに電話した。
2つのライトの位置をずらすだけなので、電話でも伝えられる程度の変更だったのだが…
これで、この件からは開放されるはずだった…しかし…
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図2
2番と4番を壁側に30センチ移動。
奥のダウンライトと中心がピタリ一致。
プランよりもカッコイイ。
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第4ステージ:トイレのダクト
下の図3を見ていただきたい。青い部分がある。わが家の1階のトイレは外壁に接していないので、換気を直接外に出せない。
そこで換気扇のダクトを外まで引くために天井部分に細工をしたのがここ。
この細工のことは前から聞いていたが、あまり気にしなかった。
ダウンライトの位置も、このことは考慮せずに決めた。
大工工事が進んで、この部分が出来上がってくると、意外に大きい。
1番と2番のダウンライトにも近い。
西野さんに頼んだ位置でダウンライトを付けられると、せり出た壁を照らしてしまうかもしれない。
気になるのでダウンライトのメーカーのHPで調べる。照明がどの部分を照らすかのデータが載っている。
案の定、この位置だとダクトの壁を際立って明るく照らしてしまう。困った。
仕方がないので位置を再検討する。図2に比べて1番と2番を奥に30センチ移動し、3番と4番を20センチ移動する
ことにした。1番と2番を30センチ移動すれば、ダクトの壁の明るさは気にならなくなるはずだ。
また3番と4番は、壁の装飾にあまり近付けない為に、10センチ短い20センチにした。
さて、問題はこの位置の変更をどのようにハイム側に伝えるかだった。
1階の大工さんや電気屋さんに相談すると「天井にサインペンで移動位置を書いてしまえば大丈夫」とのアドバイス。
確かにその通りだ。脚立とサインペンを借りて、天井に移動距離と、移動先の位置を書いた。
念には念を入れて、図面を書いてハイムにメールしておいた。
これで完璧…になるはずだった。
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図3
青い部分から離すために1と2を30センチ移動し、3と4を20センチ移動した。
4つのダウンライトは全て移動することになる。
一律の移動量ではないので、正確に伝える必要がある。
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日付:September 25, 2005 9:09 PM
件名:玄関ホールのダウンライトの位置
to:西野さん
cc:西山さん,稲垣さん,森さん
本文:
玄関扉の上を、トイレの換気の為にふかしていますが、これが予想以上にダウンライトに近いことに気付きました。
図面を添付しましたが、ダウンライトから320ミリの位置に300ミリ高のふかした壁が迫っています。
(図面の破線で書いた丸が、従来のダウンライト位置)
これでは、ダウンライトの明かりが直接ふかした壁を照らさないまでも、ダウンライトからの明かりで、ふかした壁の下部部分が
明るく強調されることになります。
あまり目立ってはいけない部分が、玄関ホールの中でかなり
目立って明るいなんて変ですよね。
これは設計段階で予想できていたことなのでしょうか?
4つのダウンライトの南側二つを300ミリ南にずらすことは既に
お伝えしましたが、更に東側の二つを西側にも300ミリずらし、
西側の二つを西に200ミリずらしていただきたいと思います。
また、天井自体にもこの変更に関して、私が落書きをして
おきました。(写真添付)
このダウンライト位置の変更は、施主の都合による変更なの
でしょうか?
私には、ハイムさん側の問題のような気がしますが…
今日、現場におられた電気屋さんには、この変更の件に関し
て説明してあります。
東側の二つのダウンライトに関しては、電気屋さんが電源
ケーブルの位置を変える必要があるとのことです。
電気屋さんも、この件に関しては西野さんに、まず相談して
下さいとのことでした。
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第5ステージ:伝達ミス
穴を開ける位置を天井に書いたし、図面も4人に送った。普通ならこれで意思が伝わるはず。
しかし、現実は予想を超えて展開する。
ある日、現場に行くとダウンライト用の穴が天井に開けてあった。やっと開いたか。しかし…
1階の大工さんと、電気屋さんが首をひねっている。私も彼らの視線を追って天井を見上げると「あらっ? 何だこの穴は…」と言葉が漏れる。
図4を見ていただきたい。確かに1と2は正しい変更位置に穴が開いていた。
ところが3と4に関しては、私が指定した移動量の20センチに更に30センチ足した50センチも動いていた。
(ライト間にある四角い黄色は、作業用に開けた穴)
私が天井に書いた穴開け位置は無視された。「天井の書込みを無視しするとはスゴイな」と逆に感心する。
インテリアの作業は、夜遅くにすることもあるそうで、今回も大工さんが知らないうちに作業されていたそうだ。
20センチの指定が、どんな行き違いで50センチになってしまったのかを皆で推測するが、分からない。
「施主さんが、更に30センチ移動しろって言ったのかなって、話していたんですよ」と彼ら。
「そんなことするはずないじゃん。第一、それなら天井のサインペンの指定も書き直すよ」
「そうですね。あの指示は完全に無視されてますもんね」
怒りを抑えて、西野さんに現場から電話する。「東の二つは30センチの移動でOKなんだけど、
西の二つが20センチ動かなきゃいけないのが、
50センチも動いてる」と説明するが、電話ではイマイチ説明し切れない。
「とにかく、この前メールで送った図面の通りに穴を開けてよ。あそこにちゃんと寸法が書いてあるでしょ。
西の二つを30センチ東に戻してもらえばいいんだから」と言って電話を切る。
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図4
1と2は正しく穴が開けられた。
しかし3と4は、指示位置よりも30センチもずれている。
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第6ステージ:迷走
数日後に現場に行くと、1階の大工さんと、電気屋さんが天井を見て笑っている。
私も天井を見上げて「あらっ? 何だ? 嫌がらせかぁ!」と怒っていたが、次第に笑いに変わる。
あまりに可笑しくて、笑わずにはいられない。
図5を見ていただきたい。間違って開けられた穴が、更に20センチ遠ざかる方向に移動している。
「30センチ戻せって言ったのに、逆に20センチ進むとは…」と呆れて言葉が出ない。
今回も大工さんや電気屋さんと、行き違いの原因を推測するが、全く理由が分からない。
「俺ってハイムに嫌がらせされているのかな」と言って笑う。
笑いを抑えて、西野さんに現場から電話する。
すると、今回の間違いは西野さんも既に現場を見て知っていた。
「何でああなるかのね? 間違える理由が分からんのだけど」と私。
「すみません。すぐ直させますから」と謝る西野さん。
「今回の一件では、落胆しています」と正直に伝える。
「天井が穴だらけだから、天井ごと替えてもらえゃ」と作業に来ていた友人の庭師が口を挟む。
「壁紙を張れば、穴は分からなくなりますから」と電話の向こうで答えている西野さん。
「分からなくなっても、こんなに穴だらけじゃ、家の価値が下がったように感じちゃうよ」と私。
「すみません。すぐ直させますから」を繰り返す西野さん。
「じゃあ、すぐに直してよ」と言って電話を切る。
天井を見ながら、また笑いがこみ上げてくる。。
「悲劇と喜劇は紙一重だな」と思う。
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図5
何を血迷ったのか、更に20センチ反対方向に移動したダウンライト。
絶句。
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第7ステージ:修復
今回は1日か2日で対応が終わったように記憶している。
現場に行って天井を見ると正しい位置に穴が開いている。図6。
内心では、更に悲惨な光景が展開されていたらと、ドキドキしたが、さすがに直っていた。
ここまで来るのに何で、こんなに手間取ったのだろうと不思議でたまらない。
電気屋さんも「やっと直りましたね」とホッとしている。
「電気屋さんがダウンライトの取り付け担当で、ここを直してくれれば、こんなに苦労しなかったのにね」と私。
「指示内容を正確に伝えるのは難しいですね」と彼。同感だ。
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図6
必要だったのは、たった4つの穴の位置変更だったのに。
エネルギーを浪費してしまった。
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下の図7を見ていただきたい。必要なたった4つの穴の為に、わが家の天井には合計14個もの大小の穴が
開けられてしまった。
しかし天井部分の石膏ボードを交換してもらうことはしなかった。この石膏ボードはビスとボンドで頑丈に固定されている。
その作業工程は工場見学でしっかり見ていた。現場で張った石膏ボードでは不安だ。
石膏ボードは穴だらけでもクロスが張られれば、きれいに何も見えなくなる。
私はそれでOKだし、この天井を見上げる度にこみ上げてくる笑いは、何もにも代え難い。
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図7
まさに、モグラ叩きの穴状態!
このことに関しては、どこの家にも負けない自信がある。
(意味のない自慢)
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教訓
セキスイハイムは大手の一流メーカーに入ると思う。
しかし、現場での迷走はご覧いただいた通りだ。これがハイムの現場で頻繁に起こっている出来事なのか、
たまたま発生した稀有なことなのかは分からない。
私は、他の現場でも起こっているトラブルのような気もするが…

人間のやることなので、完璧を期待すること自体が間違っている。ミスは当然発生するという前提で考えた
方が良いと思う。ハイムが一方的に悪いのではなく、自分の注意力が足らないこともミス発生の原因だと思った方が良い。
プランを変更した時には、十分に注意すること。プラン変更が図面に反映しているのかを確認する。
イマジネーション能力を最大限にパワーアップして、プラン変更が及ぼす影響を考えてみる。
また何度も図面を見直す。わけの分からない配筋のような図面でも目を通すことは意味があると思う。
何だか分かったような気になってくる。
現場には極力足を運ぶ。
何か気になったら、現場監督に連絡する。誰かが気付いて直してくれるとは思わない方が良い。
図面通りに作られていても、現場で見て気に入らなければ、変更の可能性を教えてもらうこと。
平日に忙しくて時間がなければ、日曜日でも夜でも施主の都合で鍵を開けてもらって確認した方が良いと思う。
強くお願いすれば、何とかしてくれると思う。
1つのトラブルにあまり集中し過ぎてもいけない。私はこのダウンライト問題で頭がいっぱいになってしまって、
他の箇所をおろそかにしてしまった。細かいことだが、悔やんでいる箇所がある。
そして、今までの話の流れに逆行するようだが、ハイムや職人さんを信頼してあげることは大切だと思う。
信頼して期待されていることが分かれば、人間は動かざるを得ないものだと思う。

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