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職人さんとの無駄話
下請けの立場
直接依頼はご法度
職人さんとの話は楽しかった。よほどの取り込み中でない限り、こちらから声を掛けた。
作業の手を止めて話をしてくれる。嫌な顔はしていないように思う。(内心は分からない)
「うるさい施主の意に反して作業を進めているのかもしれない。ならば、施主が気にしてることを早めに解決した方が得」と
考えていたとしても不思議ではない。
「今からでも、この辺りにニッチの飾りって作れるの?」と1階の大工さんに聞いてみる。
すると、色んな案を説明してくれる。私が予想しなかったようなアイディアを話してくれる。
2階の大工さんと一緒になって、裏技の披露会になった。
「階段の壁に穴を開けて、玄関ホールから明りを取ることもできますよ」と大工さん。
「えっ、そんなこと出来るの? そんなこと考えたこともないよ。目からウロコのアイディアだ」と私。
どの箇所に、どんな作業が可能かを一番知っているのは大工さんだと痛感する。
センスでは稲垣さんだが、彼女がノコギリで壁に穴を開けるわけではない。
私の受けがいいので、大工さんは次々に可能な作業案の説明を続ける。正直なところセンスの悪いアイディアも多い。
稲垣さんが大工になれないのと逆に、大工さんはインテリアコーディネーターにはなれない。
「それで、その作業って、いくらくらい掛かるのかなぁ?」と聞いてみる。
すると、途端にトーンが下がって「え〜と、それは監督か営業に…」となる。
こっちが聞きたいのは、正確な金額ではなくて大雑把な金額だ。
だから「この作業は○○円くらい。そっちの作業は○○円くらい。あれは○○円くらい」と教えてもらえば嬉しい。
しかし金額に関しては絶対に言わない。
ましてや、職人さんと仲良くなってタダで何か作業してもらおうなんて思わない方が良い。彼らを困らせるだけだ。
休み時間に彼らにジュースを持って行った。二人の大工さんと電気屋さんが3人で世間話をしている。
私も4人目に混ぜてもらう。
「家の工事で何ができるかは皆さんに、相談すればいいんだよね?」と私。
「そうですね」と電気屋さん。
「でも、価格の回答はハイムからね?」
「そう、そう、価格はハイム。相談はウチらで、価格はハイム。はははっ」と彼ら。
「価格はハイム」というフレーズが気に入ったようで、「価格はハイム! 価格はハイム!」とおじさん4人で笑いながら繰り返す。
部外者が見たら異様な光景だ。
「もし、勝手に価格を現場で話したりしたら、何を勝手な交渉をしてるんだ! って怒られますからね」と彼ら。
「そうだよね。ハイムを無視しちゃマズイよね」と私。
「はい。それなら自分で仕事をしろって、ハイムから切られちゃいますから」と彼ら。
「なら、私も職人さんも、ハイムに搾取されているんだ」と私。
「… あはは…」と彼ら。
「セキスイハイムって会社はどうなの? ひどい会社?」と私。ほとんど興味本位。会話の内容は秘密。
他にも色々な話をして、適当なところで切り上げる。
一連の会話は、彼らが自らの意思で話したというよりも、私の誘導尋問によって、口を滑らせたという表現が正しいかも。
職人さんのお客は施主かハイムか?
わが家を担当してくれた職人さんは、仕事はキッチリしていて話もしやすかった。彼らには感謝している。
私の意見を聞いてくれて、有難かった。わが家の家族のことを考えてくれた。
彼らと話をしながら、ある疑問が頭をかすめた。
「職人さんにとってのお客は、私なのか? セキスイハイムなのか?」ということ。
答えは勿論、セキスイハイム。
プランのセッションで、自分の家のプランを作っているのではなく、
工場に発注する為の資料作りをしていることの違和感を書いた。
それと似た感覚を内装工事でも感じた。職人さんが作っているのは、私の家というよりも
セキスイハイムが指示した図面通りの建物なのだ。
もし営業の西山さんにこの気持ちを伝えても
「そんなことはありません。ハイムも職人さんもDavidさんの満足する家を第一に目指しています」と答えるだろう。
確かに、セキスイハイムは現場にまで顧客第一主義を浸透させていると思う。
でも職人さんはハイムの外注という立場。彼らの第一の関心はハイムからの評価であって、施主からの評価ではない。
だから、施主の意向に沿いたいと思っても、ハイムの気分を害するようなことはしない。
既にお分かりと思うが、そういう彼らの立場を理解した上で話をした方が良いと思う。
だから、彼らに作業を依頼する時には、必ず現場監督に話を通す。
「こちらの希望で、職人さんには追加の作業をしてもらいます。金額に関わらず作業はしてもらいますが、
後で金額を教えて」と施主がハイム側に伝えることが良いと思う。
金額次第で頼むかどうかを決めたい時には「とりあえず金額を教えて頂戴」と言えばよい。
正確な金額を出すのは時間が掛かるかもしれない。急ぎなら現場監督に大雑把な金額を教えてもらうことはできると思う。
「作業は数千円なのか、2〜3万円なのか、5〜6万円くらいなのか、それ以上なのか」というレベルであれば
現場監督も電話で答えてくれる。
大工さんがいつまで作業するのかの日程も確認しておいた方が良い。
追加作業はその期間内にお願いしてあげたい。後で単独で来てもらうのは申し訳ないように感じるし、
クロスが張られてしまった後では、作業が無理になることが多いと思う。
波長の合わない職人さんとは?
ご覧のように、私は職人さんと比較的楽しくやることができた。
でも職人さんだって色んな性格の方がいる。人と話すのが苦手な職人さんだっているはずだ。
極端な例を挙げれば「何でお前みたいなヤツの為に俺は家を作っているんだよ。俺は長年借家暮らしをしながら真面目に
働いているのに、お前みたいな調子のいいヤツが立派な家に住むのは腹が立つ…」と心の中で思うことだってあるだろう。
心の中でどのように思うかを禁じる社会契約は無い。一方、倫理・道徳・宗教はここにスポットライトを当てる。
そういう時には、自分の目的は、自分の納得する家を作ることなんだと思い返そう。
苦手な職人さんに直接依頼せずに、現場監督に話をしてもいい。
職人さんは、いつまでもいる訳ではない。数ヶ月も大工さんと付き合うような在来工法ではないのだ。
過ぎていく時間を無駄にしないために、意識を切り替えることも大切かもしれない。
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