建築の記録 工事記録
二人の大工さん

内装工事開始

 内装工事
据付工事が終わり、内装工事の段階に入る。据付のたった一日で建物の80%が出来てしまったが、 残り20%をこれから一ヵ月半掛けて完成させることになる。
80%は構造部分が中心であり、目から隠れてしまう部分が多い。この80%は工場で作られるので 品質は均一で完成度も高い。プラン通りに作られているので、今更変更することはできないし、変更する必要もないほどに良く出来ている。
WEBを探せば、ハイムに対する不満が沢山出てくる。 真実もあるだろうし、単なる嫌がらせもあるだろう。それら全部をバカ正直に受け取っていては契約などできなくなる。
しかし、それらの不満を吟味すると、この80%に相当する部分への不満は驚くほど少ない。非常に興味深いことだ。 大抵の非難は大工仕事や建具やクロス張りのような表層的な内容に集中している。
裏を返せば、ハイムの構造的な完成度の高さを示しているともいえる。 逆に工程的には20%に過ぎない表層部分は、家の満足度を左右する80%の比重を持つように思う。 どんなに中身が良くても、クロス1枚で印象は大きく変わってしまうということだ。
卑近な例えをすれば、「女性の化粧」のようなものだ。おっと、これはセクハラ基準ギリギリかな。失礼。
プラン作りが終わってから、私の関心は内装工事にシフトした。
何軒もの実邸見学をしたと既に書いたが、内装で不満を感じるものが多々あった。 それは仕上げの汚さに対する不満というよりも、 ハイムのルールに対して不満を感じることが多かったと思う。ルールというとピンと来ないかもしれないが、 例えば天井の廻り縁の付け方というような事だ。
ハイムでは天井に廻り縁をトコトン走らせる。狭い空間でも廻り縁が走るので、私には返って滑稽に感じた。 どのような箇所に自分が違和感を感じるのかは、何軒も実邸を見ているとパターンが分かってくる。
だから私は、実邸見学をわが家の内装工事に対して意見を言うための予行演習のように感じていた。
さて、その予行演習の成果を発揮する時が来た。ワクワク、ドキドキ。
 廻り縁  巾木

 1階の大工さん
わが家では、1階と2階を別々の大工さんが同時進行で作業した。1階だけを担当する大工さんと、2階だけを担当する大工さんの2人だ。
大工さんの作業の範囲を正確に理解することは部外者には難しい。壁やフローリングは勿論大工さんだと分かるが、 トイレは大工さんじゃなくて水道屋さんだし、階段の手摺はインテリアの担当だった。 この分担は変わることもあるらしいし、地域によって異なるという話を聞いたこともある。
だから、大工さんの担当する範囲は大工さん自身に確認した方が良いと思う。

1階を担当してくれた大工さんは、見た目は40才くらいだった。本当の年は不明。 ほとんどの職人さんは名前を自分からは言いたがらないようなので、私もあえて聞かないことにした。 職人同士では名前で呼んでいるので、注意すれば憶えることが出来るけど、私は単に「1階の大工さん」というように呼んだ。
1階の大工さんは話好きのようだ。私が一つ尋ねると三つ教えてくれるタイプだ。 私にとっては有難いタイプだ。気にしていることを一気に聞いてしまおう。
まず、廻り縁と巾木をどのように走らせるつもりなのか確認してみた。 壁と天井が接する部分に付ける細長い部材が廻り縁で、壁と床の部分の部材が巾木だ。
階段付近では壁がないのに廻り縁だけが走る部分ができてしまう。これを私はとても不自然に感じる。 1階の大工さんに話すと、私の趣向を察してくれたようだ。
「施主さんの納得のいくように努力します」と言ってくれる。少しでもジグザグにならないようないくつかの案を説明してくれる。
「じゃあ、ここはその方法でやりましょう」と私は答える。
出来上がってから、やり直してもらうのはお互いのためにならない。 だから口うるさいかもしれないけど、作業前に出来上がりイメージを説明してもらって、 私の納得するやり方で作業してもらうことにした。
「何でも相談して下さい」と1階の大工さんにお願いする。
「次の作業は、こういう仕上げ方をしたいけど、どうでしょう?」と向こうから言ってくれることも多かった。
こういうことは図面では分からない。実際に現場に立たないと素人には見えてこない部分だ。 実邸見学で気になっていた問題を、わが家ではほとんど回避できたと思う。大工さんに感謝している。 頻繁に現場に足を運んだから出来たことだと思う。
廻り縁のことを妻に話すと、私の言っていることは理解するけど「そんなには気にならない」と言う。 人によって関心が異なるということだ。
 張り紙  大工工事

現場には朝早く顔を出して、仕事帰りに職人さんが作業をしていれば顔を出すという感じだった。 土曜日は現場に入り浸り。
子供も時々連れて行った。邪魔になったり、危険だから子供は連れて行かない という意見もある。確かに一理ある。しかし私は二つの理由で子供を現場に連れて行った。 一つは子供のため。自分がこれから成長していく家の建築の様子を目に焼き付けることは、子供にとって意味があると思った。 もう一つは職人さんへのアピール。どういう家族が住むかが分かれば、彼らも作業がしやすいのではないかと思った。 これは、私の勝手な思い込みかもしれない。
私はメジャーを持って、現場を計りまくる。職人さんから見れば、うっとうしい施主だろうと自ら思う。
まず図面と比べて、実際の作業が正しいかどうかを確認する。図面通りであれば、大工さんに落ち度はない。 しかし、図面通りの寸法でもアンバランスに感じる箇所が出てくる。こういう場合は自分の感性を信じるしかない。 その場合は大工さんに問題は無いので、お願いになる。
「ここを、もう少し右に変更することって、今からでも出来るの? 3センチくらい…」てな具合。
大抵の返事はOKだった。NGの場合はNGの理由を説明してくれた。面倒だからという理由ではなく、構造的に無理な場合が多かった。
ある日、私が天井をじっと見ていた。ダウンライトの位置が気になった。ダウンライトは大工さんの範疇ではない。
「やっぱ、気になりますか?」と1階の大工さんが近寄ってくる。
「私の考えていることが分かる?」と私。
「大抵の人は気にしませんがね」と彼。
「私って、うるさい施主かな?」と聞いてみる。
「実は、こっちとしてはハッキリ言ってもらった方が有難いです。 不満を持たれたままでは嫌だし、完了後に直せって言われるのが一番かなわんですから」と彼。
「そう言ってくれると、嬉しいよ」と言いながら計測を続ける。
 床の鉄骨部分  ニッチ  養生のネット


 2階の大工さん
2階を担当してくれた大工さんは、見た目は60才近い感じ。本当の年は同じく不明。
1階の大工さんほど話好きではない。 でも質問すると丁寧に答えてくれる。技術力は高いと感じさせる雰囲気を醸し出している。
2階の大工さんには、ハイムの図面には書かれていない作業をお願いするために、3枚の図面を私自身で書いた。
この図面は、後述する「キッチンカウンターの問題」「台所スイッチの問題」「その他の変更点」の 各テーマに絡んでいる。
私は建築図面なんて全く知らない。見よう見真似で何とか書いた。 普通ではあまり無いことだと思うので参考にならない話かもしれない。
「適当にやっておいて」とお願いすることも出来ただろうが、誰かが寸法を決めることになる。 設計が図面を作って大工さんに指示するか、或いは大工さんが現場で適当にやってしまうことになる。
その結果に私が不満を感じる可能性は低くないので、自分で図面を作った方が早いと思った。 現場での作業も日々進捗しているので、急いでいたこともある。設計を通していたら、大工さんの作業が終わってしまう。
建築現場での共通言語は最終的には寸法しかない。 初めのうちは、寸法で考えることは馴染めなかった。
「もう少し大きく」と言葉で言っても、もう少し大きくが何ミリなのかを決めなければ大工さんは作業できない。 そうならば、自ら寸法で指示した方が気楽。 素人がすべき事ではないかもしれないが、そうすることにした。
2階の大工さんにはご迷惑を掛けたが、これらの作業に喜んで対応していただいたことを感謝している。
次ページ以降に詳細を記す。

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