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据付工事
スペクタクル
据付開始
熱い一日になりそうな気配。日本海に抜けた台風の影響で風が強い。
据付は8時半開始と聞いていた。8時頃に現場に着くと、既にクレーン車が到着していた。
職人さん達も集合している。現場だけでも10人以上いるようだ。
「Davidです。よろしくお願いします」と言うと、「お願いします」と返ってくる。
間もなく朝礼が始まった。西野さんの指示で体操が始まる。掛け声の練習もあるようだ。お互いの服装のチェックもしている。
今日の工事の概要や注意点が説明され、挨拶をして朝礼が終わる。
朝礼の間に、ユニットを乗せた何台ものトラックが少し離れた広い道路にずらっと並んだ。
すごい迫力。馴染みない光景にドライバー達が「何事だ」という顔で通り過ぎる。
注意深くユニットを見ると、家のどの部分なのかが何となく分かる。「これは和室。これは、多分…寝室」てな感じ。
現場では、クレーン車がクレーンを高く伸ばして、ユニットの到着を待っている。準備万端。
家の前の道幅は4.5メートルと狭いので、広い道路でスタンバイしていたトラックが一台ずつ順に入って来る。
一台のトラックからユニットが降ろされると、次のトラックが入ってくるという手順で進められるらしい。
交通整理を担当する人は二人。
一つ目のユニットが到着する。数ヶ月間待ち望んだ愛する人に会うような気分。
英語教室に使う部屋だ。ローズベージュのタイルが真夏の日差しに輝いて美しい。
そのユニットが吊り上げられ、静かに降ろされ始める。
電線の隙間をすり抜けるクレーンの見事な操縦。設置地点が近付くと、
アンカーボルトの真上の位置に、職人さんがユニットを押して微調整する。
着地すると、何人もの職人さんが作業を素早く行う。
ユニットの下にもぐってボルトを締める人。配線を通す人。断熱材を固定する人。早業だ。
一つのユニットが吊り上げられてから、固定されるという一連の作業は、数分で終わってしまう。
「あっけないわね。もう少しゆっくりやってほしいわ」と妻が言う。
あっという間に8つのユニットが並べられると1階は終わり。次に玄関ステップの天井部分が設置された。間近で見ると意外に大きい。
ここで一旦休憩に入る。500ccのペットボトルを30本差し入れた。2回の休憩分の飲み物。
皆さんが休憩している間に、足場を登って1階の上の部分を見る。風が気になるので、手摺をしっかり握って慎重に
階段を上がっていると、へっぴり腰の私を見て職人さんがペットボトルを飲みながら笑っている。
こわごわしながら登って、1階の天井部分を下に見る。断熱材や電源ケーブルが沢山置いてある。
ユニットの鉄骨部分が太陽にきらめいて眩しい。何枚も写真を撮る。
休憩が終わると、職人さんが一斉に1階の天井に上る。断熱材を固定したり、配線をつないだり
ユニット同士をボルトで締めている。2階を乗せてしまった後では取り返しが付かないので
作業忘れがないように気をつけている。
しばらくして、2階部分のユニットの据付が始まる。
2階部分は7つのユニット。それから二箇所のベランダも付けられる。
ベランダの設置の方がユニットよりも手間取っている様子。
しかし、ここまでは極めてハイスピードで据付が進んでいる。

ドマーニの三角屋根
昼休みを終えて、今度はドマーニの切妻屋根の取り付けが始まる。パルフェとドマーニで違う部分だ。
屋根の部分をどのような手順で組み立てるのか、以前からとても関心があった。
三角屋根を数個に分割してトラックで運んでくるのだろうか?
「瓦が乗った状態で工場から出荷されるの?」と西山さんに聞いてみる。
「いいえ。瓦は現場で乗せます。据付から数日経ってからです」との回答。
屋根の工程を注意深く見る。まず屋根の中央部分に数本の鉄骨の柱が立てられる。そこに2m×3mほどの長方形の板を
斜めに固定する。すると屋根の端が表れる。
なるほど…屋根全体がユニットになっているわけではないのだな。屋根は板なんだ。
ただ、屋根の中央部分で小屋裏になっている部分はユニット化されている。普通のユニットは上面が平らだけれど
このユニットは三角形に尖っている。見た目にはユニットだけれども、ユニットの数には加えられない。
小屋裏部分が乗った後で、残りの部分に先程の2m×3mの長方形の板を乗せていく。この板の枚数は
合計14枚。太陽光パネルはこの板に既に張ってあるようだ。
またこの板には、防水用の黒いシートが既に張ってある。
板を固定した後で、このシートを広げると雨をしのげるという仕組みだ。良くできてると感心する。
後日、瓦を乗せるまでの間は、このシートが雨を防ぐ役目をする。
普通のユニットが工場で作られるのに対して、三角屋根の部分は現場で作られることが分かった。作業には時間が掛かる。
あの屋根を乗せるために価格が上がってしまったが、屋根の面倒な作業を見ていると、仕方ないのかなと思う。
1・2階の据付に掛かったのと、同じ位の時間を掛けて屋根が完成した。
屋根が出来上がると、建物の背丈が一気に高くなった。確かにカッコイイ。
「ドマーニにして、やっぱり良かったよ」と妻に言う。
とても満足げな表情の妻。
瓦は数日後に載せる。ちなみに、その瓦にはアスベストは使われていない。

1日で80%が完了した
夏なのでまだ暗くならないが、夕方が近付いてくる。
「Davidさん、建物の中に入れる準備が出来ました」と西野さん。
とてもワクワクする。穴の開くほど図面上では熟知している家、でも実際には初対面。朝は影も形も無かった家に、家族で入る。
「わが家のハイムさん、よろしく」と心の中で挨拶した。
これから大工仕事で作る壁もあるが、確かに家の80%は既に出来上げっている。家族で「ここは婆ちゃんの部屋だ。広い…」などど
いいながら、キャッキャしている。図面だけの知識が、体感的に理解できた瞬間。
荷物がいっぱいなことに驚く。これから家を完成させるのに必要な部材は、
ユニットに入れられて工場から出荷されている。壁紙・ダウンライト・浴槽・システムキッチン…
これら全てが家のどこかに置いてある。
電線が天井から何本もぶら下がっている。むき出しの鉄骨も所々で見ることができる。
現場の大工仕事だろうと思っていた箇所が、既に工場で作られていることにも驚く。
階段も使える。階段を上って2階に行く。全ての窓が使える状態になっている。出窓はトラックの幅よりも、はみ出して
しまうので、工場からはユニットに付けて出荷することができない。クレーンで吊り上げた時には、出窓の部分には大きな穴が
開いていたのに、いつの間にか出窓が付いている。
「すごいな」を連呼する。
1日で、ここまで出来たことに感動する。
HPなどで1日据付は理解していたのだが、自分の目で自分の家の据付を見ると感動する。
建物の外に出ると、少し暗くなっている。
「雨も降らずに、良い1日でした。ありがとう」と西野さんに礼を言う。
家の前の道は朝夕に散歩する人が多い。皆さん同じように驚いている。
「朝の散歩の時には、何も無かったのに…」とささやいている。
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