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積水化学工業を知ろう
report 2 「キーワードから見たセキスイハイム」
積水化学工業株式会社 3つのカンパニー
セキスイハイムの実体は「積水化学工業株式会社 住宅カンパニー」だと前ページで述べた。
積水化学には住宅カンパニー以外に2つの大きなカンパニーがある。
まず住宅カンパニーを再確認しておこう。
住宅カンパニーには2007年3月現在、9,137人の社員がいる。その内の2,419人が営業マン。
この数字は200以上もある子会社の社員数を総計したもの。
積水化学全体の売上げの約9,262億円(2007年3月期)の約半分(46.4%)を住宅カンパニーが占める。
売り上げは約半分なのだか、営業利益構成比は31.7%であり、他カンパニーと比べて利益の出し難い部門といえよう。
次に大きなカンパニーが「高機能プラスチックカンパニー」であり、社員数は5,114人。売上げは全社の25.6%。
最後に「環境・ライフラインカンパニー」。ここには3,616人の社員がいる。ここの売上げは全社の23.1%。
住宅以外の2つのカンパニーの業績は比較的好調であり、今後も技術力次第で業績を伸ばすことができる。
積極的に海外展開もしている。顧客は主に企業。
「高機能プラスチックカンパニー」は社員数も売上げも住宅カンパニーより低いのに、営業利益構成比は45.8%で住宅よりも
儲けているのだ。
一方、住宅カンパニーは積水化学の大黒柱だが、日本という限られた地域の中で、40万戸を下回る限られたパイを
奪い合う状況の中で拡大しなければならいという難しい舵取りを迫られている。
プレミアムカンパニー
積水化学は中期経営ビジョンで「プレミアムカンパニー」という言葉を掲げている。プレミアムカンパニーという
キーワードは、積水化学が最近発行する資料には必ず盛り込まれている。
しかも、この言葉は曖昧なイメージではなくて、明確な説明がされている。
それは、「際立つ」技術・製品により「高収益」を実現し、持続的成長を遂げる企業を指しているそうだ。
簡単に言えば、「魅力的な製品」を「高く売る」ということだ。
「高収益」には数的目標が設定されている。「営業利益率10%」達成がプレミアムカンパニーの条件だという。
現在の営業利益率は4.6%。住宅カンパニーの営業利益率は3.4%と4%を下回っている。
これを全社で10%超にまで引き上げることに積水化学は懸命になっている。
「営業利益率10%」は、当初は3つのカンパニー、さらに23のビジネスユニットの全てに共通して設定されている目標だった。
つまり、どの部署も同じくらい儲けようと考えていたフシがある。
しかし、最近は、各カンパニーごとの利益率の目標を変えている。
前期(2006年度)の営業利益率と2008年度の営業利益率の目標は、次の通りだ。
・住宅カンパニー 3.3% → 6.3%
・高機能プラスチックス 8.4% → 12%
・環境・ライフライン 5.0% → 7.2%
つまり、積水化学の大黒柱である住宅ビジネスは、他カンパニーと比較してしまうと、儲けが薄いビジネスだと言える。
そうなると、より一層、儲けの出る家を売りたくなるだろうと思う。
私たちにあてはめると、セキスイハイムを魅力的な家にするので、
高く買ってほしいということだ。1軒ごとの住宅販売で、少しでも高機能で単価の高い設備を
私たちにアピールしてくることになる。
住宅販売の利益を今の倍にすることのが、彼らの狙い。
一方、私たちは、少しでも安く買いたい。この対立はこれから更に激しさを増すと考えられる。
担当してくれる営業マンが優しくて、安く販売したいと考えたとしても、会社としては「高く売れ」という強い指示が
その営業マンには発せられている。
数多くの家を売る営業マンは勿論評価されるが、高く売る営業マンが積水化学では評価されることを憶えておくことは、
無駄ではないと思う。
際立つ
「際立つ」というキーワードも積水化学を理解する時に、大切な言葉だ。
「際立つ」とは競合他社と比べた場合に、魅力的な優位性を持ち、競争に勝てるということ。
だから、「他社と同じような住宅だけれども、他社よりも安い価格で勝つ」のは積水化学のスタンスではない。
私は同じユニット工法という理由で、ハイムとトヨタホームを競合させた。
同程度の性能の住宅で比べて、安い方を選ぼうという狙いだった。
しかし、ハイムは常に同程度の性能ではなくて、トヨタよりも「際立つ」性能をアピールしてきた。
その代わりに、トヨタよりも高いというのが彼らの変わらぬスタンスだった。
もし彼らが「トヨタと同程度の性能を、トヨタよりも安く」というスタンスとった時点で、
セキスイハイムの存在意味は無くなってしまったかもしれない、と思う。
このHPの「contract」−「めまぐるしい六週間」−「第六週目」のところで、営業の西山さんが
トヨタからの最終提案が出る前に判断をせまったことも、積水化学のIR情報を見ることによって
納得できたような気がする。
積水化学が住宅カンパニーで「際立つ」と考えている機能を再確認しておこう。
それは「ユニット工法」だ。
短い工期で完成できること。均一の高い性能を維持できること。耐震・耐久性能に優れていること。
高断熱・高気密であること。
これらが、積水化学が住宅カンパニーの「際立ち」として昔から強調してきたことだ。
2000年頃から「際立つ」機能として、新たに強調し始めたのが次の3大コンセプトだ。
「光熱費ゼロ住宅」
「ライフサイクルコスト(LCC)」
「環境配慮」
このコンセプトは世の中に支持され、光熱費ゼロハイムはヒット商品になった。
ただ、何もせずに受け入れられたわけではなくて、テレビCMなどで流し続けたメッセージの影響は大きい。
私もセキスイハイムに全く関心がなかった頃に見たCMを今でも覚えている。
「幸せの貯金をしたいんです…」というようなCMのことだ。
TVコマーシャルには多額の経費が必要だが、その効果は大きい。
太陽光発電システム搭載住宅の販売実績(累計)は、2005年5月にはついに4万棟数を超た。住宅業界でNo.1を誇っている。
タイル外壁搭載率のUPも前ページで見た通りだ。
「ウォームエアリー」や「クールファクトリー」、あるいは「ユレナビ」などの新しい「際立つ」機能は、
私が検討していた時には無かった
ものだ。積水化学が新製品の市場投入で優位性を追求しようという姿勢には、驚く。
また、「グランツーユー」自体もも新しい「際立ち」だと言えよう。
独自の「空気工房仕様」と「2×6の構造躯体」は従来とは違う顧客層を獲得している。
従来のツーユーは、「際立つ」魅力には陰りが見えていたと言えなくもない。
全国のツーユー系の展示場を急速に「グランツーユー」に置き換えていることからも、積水化学の意図が明確に現れている。
また「グランツーユー」で成功したキレイな空気を鉄骨系へ展開しようとしているのは当然のことかもしれない。
高収益
高付加価値製品で積水化学が求めているのは、商談に勝つことだけではない。
積水化学は「高収益」こそが、彼らの目的だと断言している。
これは、私たち購入者には見せたがらない側面だと思う。セキスイハイムのHPをどれだけ見ても
「高い家を売って儲けさせていただきたい」とは書いていない。
積水化学は「脱・価格訴求」というスタンスを保っている。安売り合戦には参加しないという立場だ。
その為に1軒ごとの棟単価のUPを求めている。私たちが高くても良い家を求めると読んでいる。
確かにその通りだ。
2005年3月期のアニュアルレポートでは「価格競争が続く市場環境にあって、当社は高付加価値商品のさらなる販売拡
大により、シェア拡大と単価の向上を目指します」と書いている。
つまり、私たち施主の購入価格を引き上げたいということだ。
それは、値上げではなく、魅力的なオプションを購入者に同時購入してもらうという手法による。
積水化学のシナリオ
さて、彼の本棚にあった「プロポーズを成功させるコツ」を、こうして読んでしまった。
彼とはセキスイハイムのことだ。
この本を読んで、自分にしてくれた一つ一つの事が「ああ、そういうことだったのか」と納得できた。
知らないでいた方が幸せだっただろうか?
実際の結婚相手を決める時であれば、相手の心の中は他の誰にも分からない。
それゆえに相手を信じるという、人間にとって最も尊い賭けをする。
しかし、企業としての積水化学の場合には、彼らの狙いを知ることは権利として認められていることでも
あり、購入者としても知っておく必要のあることだと、私は思う。
積水化学のシナリオ通りに自分が動かされていたという事実は、しゃくにさわる気もするが、
だからといって私がハイムを気にっていることに変わりはない。
あなたは、どう感じただろうか?
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 hints
セキスイハイム以外のハウスメーカーで悩んでいる場合も、その会社が株式を公開していれば、
IR情報を探してみよう。
営業マンと何回も会うよりも、その会社が分かるかもしれない。
ただ、そっけない文体なので覚悟して読むこと。

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